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2017 - 08 - 20

国の家計簿が変わったトコロ~国際収支統計②~

前回に引き続き、今回も「国際収支統計」についてのお話です。前回は、国際収支統計が改定された背景について触れてきました。今回のテーマは「何が変わったの?」という点です。

前回に引き続き、今回も「国際収支統計」についてのお話です。

 

前回は、国際収支統計が改定された背景について触れてきました。

今回のテーマは「何が変わったの?」という点です。

 

では、さっそく見ていきましょう。

 

 


◆国際収支統計の何が変わったの?

 

全体像は、こちら。

 

(第一学習社 資料編より)

 

主な変更点は3つ。

 

・名称の変更

・集計項目の変更

・計上方法の変更

 

順に見ていきましょう。

 

 


◆国際収支統計の変更~名称及び集計項目の変更~

 

国際収支統計には、大きく4つの項目があります。

以下は、改定後の項目です。

 

 

1.経常収支

 ①貿易・サービス収支

 ②第一所得収支

 ③第二次所得収支

2.資本移転等収支

3.金融収支

4.誤差脱漏

 

 

【変更のポイント】

・対価を伴うものかどうかを明確に区別した

(例:第一次所得収支、第二次所得収支)

・表記を国民経済計算での名称に合わせた

(例:第一次所得)

 

その他は名称の変更や項目の独立、移管等がありますが、私自身が感じる大きなポイントはこの2つでした。

 

 

次に、各項目について触れていきます。

 

 

1.経常収支

後掲する①~③の収支の合計。

金融収支に計上される取引以外の、居住者・非居住者間で債権・債務の移動を伴う全ての取引。

 

①貿易・サービス収支

・貿易収支:モノの輸出入の収支(輸出―輸入)

・サービス収支:モノ以外の形のない取引の収支

(例:輸送、旅行、金融、知的財産権等使用料など)

 

②第一所得収支

対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支。

・直接投資収益:親会社と子会社間の配当金・利子等の受取・支払

・証券投資収益:株式配当金及び再建利子の受取・支払

・その他投資収益:貸付・借入、預金等にかかる利子の受取・支払

 

③第二次所得収支

居住者と非居住者間の対価を伴わない資産の提供にかかる収支。

食料や医療品など官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払等。

 

2.資本移転等収支

対価の受領を伴わない固定資産の提供、債務免除のほか、非生産・非金融資産の取得処分等の収支。

政府が外国に実施する道路や港などの資本形成の援助等。

 

3.金融収支

直接投資、証券投資、金融派生商品、その他投資及び外貨準備の合計。

金融資産にかかる居住者と非居住者間の債権・債務の移動を伴う取引の収支。

直接投資:例)海外に工場を建てる

証券投資:例)外国の株式や債券を購入する

 

4.誤差脱漏

帳尻合わせ?!と言ったら怒られるかなw

資金の流入に対応する項目がない場合は、この項目に計上される。

 

 

 


◆国際収支統計の変更~計上方法の変更~

 

私がなかなかイメージできなかったのは、この部分です。

(未だにわかっているわけではありませんが・・・汗)

 

私たちは、何かを買う場合にそのモノと同じ価値のカネを支払います。

「モノ=カネ」の関係です。

その場合「モノ―カネ=0(ゼロ)」であるとも言えます。

この関係が、新しい国際収支。

 

従来の計上方法と、プラスマイナスが逆になった・・・と書かれていたりします。

詳細を読めば読むほど、わからなくなってしまいます。

従来の計上方法を把握している方にとっては、その理解がわかりやすいかもしれません。

しかしながら、私はアナログタイプ。

実際の取引をもとに考えたほうがわかりやすかったので、具体例を抜粋します。

 

 

10の取引事例が、国際収支統計上どのように記載されるか。

複式簿記なので、1つの取引に対して2か所に同じ数字を計上することになります。

簿記に親しみがある方はぜひチャレンジしてみてください♪

 

 

 

 

≪国際間の取引例≫

①500億円の自動車を輸出、その代金は銀行口座に振り込み

②原油を200億円分輸入、その代金は銀行口座から送金

③日本人の海外旅行ブームで、現地のホテルの宿泊代や食事代に10億円支払った

④フィリピンの台風被害に対して、10億円の物資の無償援助を行った

⑤日本の企業が、自社の株式を保有する外国投資家に5億円の配当を支払った

⑥日本の銀行が、海外の投資先から利子10億円を受け取った

⑦日本企業が、海外の会社の特許の使用料を100億円支払った

⑧外国人投資家が、日本の企業が発行した社債を100億円購入した

⑨日本の企業が外国の企業を買収(直接投資)し、100億円支払った

⑩日本銀行が円高抑制のため、10億ドルの円売り介入を実施した

 

 

 

 

 

いかがでしたか。

 

この例題は、日本大学の小巻教授が実際に出題されていたものの抜粋ですが、私の頭をすっきりさせる効果があったのでご紹介しました。

 

 

 

この10の取引を集計すると・・・

 

経常収支 195

金融収支 195

 

となり、先ほど触れていた「モノ(経常収支)―カネ(金融収支)=0(ゼロ)」の関係が成り立ちますね。

 

 

それらの名称や集計項目が変更されたことに伴い、国際収支統計の恒等式も新しくなりました。

 

「モノ―カネ=0」

 

つまり「経常収支+資本移転等収支-金融収支+誤差脱漏=0」となるわけですね。

 

 

 

 

 

国際収支統計からいろんなことを読み解くには、まだまだ無理です。

しかしながら、概要をなんとなく知ることができたのは・・・

すこーし前に進めたかな??

 

私の頭の中も「国際化」していかないとですね。

 

 

 

 

 

≪引用資料≫

日本銀行 調査・研究 国際収支関連統計の見直しについて

日本大学経済学部教授小巻泰之氏 新しい国際収支統計をもとに経済の流れを読む

第一学習社 資料編 日本の国際収支統計、大幅見直し