2017 - 08 - 20
国家の家計簿と言われている「国際収支統計」。日本では2014年1月に計上方法が改定されました。ネット上で検索しても新旧入り混じっていたので、私自身の頭の整理も兼ねて国際収支統計について見ていきます。
今回は、私にしては珍しく小難しい話題です。
でもまぁ、所詮私レベル。
みなさんの理解のほうが進んでいることかと思いますが、自分の覚書も兼ねて「国際収支統計」について書いていきます。
2014年1月に国際収支統計の内訳項目の名称や計上方法が改定されました。
その改定の意味や背景に触れながら、全体像をイメージできたらと思います。
その文献等の出典は、最後にまとめています。
◆「国際収支統計」とは?
国際収支とは、世界各国の「家計簿」。
1年間の国際取引の受取と支払の勘定の記録です。
モノやカネの流れ、つまり経済の流れを国際的に捉えるためのものです。
経済の流れの中で、国際収支がどのように変化するのか。
その過程で為替レートがどのように変動するのか。
そんな経済の流れや構造を把握するのに使われるようです。
◆「国際収支統計」って何?
世界各国で計算される国際収支統計は、IMF(国際通貨基金)の基準に従って作成されています。
ものさしが同じであるため、国と国の比較ができる統計ということになります。
そのマニュアル改定があり、日本では2014年1月より新しい基準に準拠した統計が作成されています。
なぜ、従来のマニュアルから改定する必要があったのでしょうか。
改定の目的は、各国が保有する金融資産・負債状況を明確にすることだと言われています。
つまり、従来の尺度では把握できなかった内容があったために変更したわけです。
その理解をした上で、新国際収支統計を見たほうが流れがスムーズになるでしょう。
その「従来の尺度では把握できなかったこと」とは、一体何でしょう。
◆国際収支統計はなぜ改定された?
国際収支統計の改定の背景には、1997年7月に生じた「アジア通貨危機」があるそうです。
アジア諸国は1990年代以降、外国資本の積極的な導入により高度成長を続けていました。
さらに、外国資本がより流入しやすくするために国内金利を高めに誘導します。
・当時、ほとんどのアジア諸国が「ドルペッグ制」を採用
※ドルペッグ制:自国通貨と米ドルを固定
↓
・為替相場が安定的に推移するため、金利高による利息収入の増加が見込める
・アジア諸国の高度成長の未来に期待できる
いかがでしょう。
当時、もしあなたが投資家であれば、これからの伸びしろを大いに感じるアジア諸国の未来にどんどん投資したのではないでしょうか??
こうして、アジア諸国はその投資資金を元手として、輸出主導の経済を発展させてきました。
しかし、その状態の先にあるのは「自国通貨高」です。
アジア諸国のお金の価値が上がってしまいます。
円高の状態ですね。
一見、お金の価値が上がると良さそうなものですが、どこが問題なのでしょうか。
一番の問題は、輸出です。
アジア諸国で作ったモノを、海外に輸出して経済の流れをつくっていたときに、自国通貨高になると・・・
輸出が伸び悩みます。
一連の流れのイメージとしてはこんな感じでしょうか。
経済の高成長
↓
輸出増大
↓
自国通貨高
↓
輸出減少
↓
自国通貨安
↓
経済成長鈍化
そうなると、アジア諸国の未来に期待していた投資家たちは、一斉に手を引き始めます。
投資資金を元手に経済成長を続けていたアジア諸国は、その資金がなくなり、持続的な成長を維持できなくなります。
通貨価値はさらに下落し、経済活動自体も急激に落ち込みました。
これが、アジア通貨危機の概要です。
このとき、外資の割合によって通貨危機の影響度合いが違ったそうです。
「各国の資産、負債のうち、外資がどのくらいあるか?」
この情報の必要性が、国際収支統計の改定の背景にあるのでしょう。
そうして内訳項目の名称や計上方法が変わった国家の家計簿「国際収支統計」。
次回は、具体的にその内容について触れていきたいと思います。